break time
「ひめさま」
「あ・・・?」
「あ?じゃありませんよ姫様。いい加減いい人の一人や二人連れてきてじいを喜ばせてくれませんか?」
「いい人?うーーーんこの国の人たちはみんないい人「姫様」」
「じいは、心から心配申し上げているのですよ。」
「・・・だって、まだ恋愛とかそーゆーのは・・・」
「ひ め さ ま ほらまたそうやってはしたない姿勢をとられて。そんなんだから良い殿方も「はいはいはいはいわかったよわ か っ た 」
あの時ワタシが、じいやに言ったことはうそじゃなかった。
恋愛なんてワタシにはまだまだ先の話だと思っていたし、男なんかどれも頼りなくて興味もなかった。
幼いころから仲良くしていた友達は次々に好きな人ができたりして楽しそうではあったけど。
ワタシには・・・うーーー・・・ん良くわからないことだったな・・・。
友達がそう。「なんだか体が火照って」とか、「なんか胸が痛いの」とか言ったりしてたけど
・・・ピンと来たことなんか今まで一度もなくって。
「ではひめさま、どんな殿方ならばいいのですか?」
「どんなっていっても・・・うーーん」
「はぁ。私たちの世代でそのようなことがあるとは思えませんが、いつか光の勇者でもあらわれてくだされば、姫様でも惚れることもあるのでしょうがねぇ。」
「光の勇者?そんな空想上の男なんか好きになれるわけないだろ。」
「ほ ほ ほ ほ。それもそうですな。でも、言い伝えによると相当お強くて魅力的であると。」
「・・・まったく・・・夢みたいな話してどうすんだよ・・・」
「ほ ほ ほ ほわかりませんぞーー」
そんな冗談言い合ったのは一体いつのことだったかな。
あの時はきっと言いだしっぺのじいやだって、光の勇者のことなんておとぎ話の中の人だって思っていたはずなんだ。
耳元に寝息がかかる。そして下のほうからは沢山の魔物がぎゃあぎゃあ言いながらこちらに必死に武器を向けてる。
ワタシは呆れた顔をして寝息を立てている張本人の間抜けな寝顔を見た。
リンクは下で必死になってる魔物がかわいそうになるくらいよく寝てる。
少し高い、太い枝の上。その不安定な場所で絶妙にバランスを取りながら。
ワタシの身体はこの寝坊助勇者―――リンクに抱きしめられてぴくりともうごけない。
「だって落ちたら魔物の餌食だよ」
なんて、バカなことを言って。彼は私を掻き抱いて眠りだした。
影の中に入ってしまえばわざわざこんなことしなくったって大丈夫なんだけれども・・・
大丈夫なんだけれども・・・なんでだろう。ワタシはそれを言い出すことができなかった。
一時窮屈に感じ、ワタシは彼の腕から逃れるべく暴れてみたのだが。
このバカ力に抗うこともできず私はいまだにリンクの腕の中にいる。
え・・・?ワープで出ればいいじゃんだって・・・?
ま、まあそうなんだけど。なんていうか とりあえず私はリンクの腕の中に甘んじて包まれていた。
ため息交じりに筋肉質な胸に頬を寄せると規則正しい心臓の音が鼓膜を刺激する。
「あったかいな・・・」
なんて、少しまどろんでしまう。
何があったかいって?そ、それは日の光だよ・・・!
「ん・・・」
しばらくそうしていると、リンクが声を発する。ふと声のした方をみやると大きな碧い眼をゆっくりと開いた。
そして大きな口を開けてあくびをすると、ゆっくりとこちらに目を合わせてきた。
下では相変わらず魔物どもがぎゃあぎゃあ騒いでいるが、そんなこと意に介していない様子。
「あ・・・ミドナおはよう」
なんて、のんきなことを言ってる。
「おはようじゃない!く る し い!!!!」
ワタシが怒鳴るとリンクはあわてて腕の拘束を解いた。ワタシはゆっくりと空に漂うと大げさにのびをした。
高揚したほおを悟られないようにリンクに背を向ける。まったくどうしてこんなに暑くなるのかまったくもって意味がわからない。
「ミドナ、一緒にいてくれたんだねぇ」
なんて反則な笑顔を向けてくるリンク。
グサ
炎で熱した弓矢を胸を刺されたみたいに胸が痛く、熱くなる。
「うっうるさい!うるさいうるさい!」
どう反応していいのかわからずリンクの頭をぴちぴち叩く。
「痛い 痛いよ」
ほんとは大して痛くないくせに リンクは大げさに頭を抱えてガードした。
「と、ところでほれ下の奴ら。お前に相手にしてほしくて必死だったんだぞ。」
ワタシは必要以上の大声でリンクに指示を飛ばす。なんでだろう。声のボリューム調整が難しくって。時に声がひっくり返ってしまう。
「ん?あ〜・・・」
リンクは気のない返事を出すとようやく下を見た。そして背中のマスターソードに手を伸ばし・・・
「じゃあさっさと片付けてくるから。ミドナは安全な場所でまっててね!」
なんて偉そうなことを言いながら木の下へと飛び降りて行った。
ワタシは木の上に体育座りしてリンクを見つめる。よくもまあこんなバッタバッタと魔物を斬っていけるもんだ・・・。
顔を膝にうずめ目だけ出してリンクの動きを追う。
また、胸が熱くなってく。
ワタシは顔をぶんぶんと振って原因不明のこの熱を追い出した。
まったく最近どうしてしまったというんだろう・・・
そうこうしているうちに眼下ではすっかり倒された魔物が積まれてゆく。
直後、最後の一匹にとどめをさすリンクの姿が目に映った。
魔物の身体からマスターソードを引き抜き華麗に剣を振って鞘に納める。
そしてこちらを見つめ手を差し伸べてきた。
「さあミドナお手をどうぞ。」
―――こいつ、何バカやってんだ。
ワタシはリンクに近づくと一つげんこつを頭に浴びせると そのまま彼の影に入っていった。
「あれ?ミドナ?な、何を怒ってんの?」
なんて。困った声を出すけど。
ワタシはぷいとそっぽを向いた。
fin
ミドナ・・・素直じゃないなぁ
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